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2009年1月26日 (月)

「音響工房アナログ式」のルーツ② STUDER A-80

■「アナログ式」のルーツ2回目は、前回のAMPEXと対極にあると言ってもいいSTUDERのアナログテープレコーダーだ。道場主がAMPEXと共に長年スタジオで使ってきたのはA-80の2トラック、4トラック、16及び24トラック、B-67、A-80の後継機種のA-800、A-810、A-820である。

■資料映像の(例によって他人様のだが)、まず外観に注目して欲しい。STUDERはAMPEXと比べて、なんと言ってもスマートなフォルム、細部までカチッと精巧な作り、言わば’洗練された’印象がある。アメリカ文化とヨーロッパ文化の違いとも言える。そのサウンドはAMPEXのような土臭い馬力感とは違い、どちらかと言えば優等生的なまとまりのあるサウンドだと思う。

■走行系については、ピンチローラーとキャプスタンシャフト(※テープを移動させる要の部分)の部分で起こる’テープのせり上がり’に問題があったが(これは後継機種でも発生した)、全体的に安定度は高く、AMPEXよりは’安心感’があった。しかも無愛想なAG-440に比べ、こちらは至れり尽くせりである。シャトル(※テープ編集の時に便利な機能)が付き、ヘッドブロック部に仕込まれたテープ編集用のハサミは効率が良く、これは本当にスグレモノであった。

■STUDERとAMPEXは、前述のようにサウンドキャラクターが異なるので、録音するプログラムによって使い分けた。両者のどちらが上だというのではなく、両者とも素晴らしいテープレコーダーだ。操作性も音も違うマシーンの性格を知りどう使いこなすかが、もちろんアナログ/デジタルに限らず機器を使う上で大切だ。

■個人的好みで言わせて頂ければ、AMPEXの音にSTUDERの操作性があれば完璧だったのだが。完璧なものが存在しないからこそ、アナログの世界は奥が深い。作り手の顔が見えてくるような機械の個性。そしてメンテナンスを自分で行えて、好みの加減に調整が出来ることも大きな魅力である(もちろん知識と技術を身につけた上で、の話だが)。

■ちなみに、これらの機材はすべて中古で(格安で)スタジオ放出品を入手し、メンテナンスをして使った。熱意はあるが資金のない、大手スタジオを飛び出した若手エンジニアが創った、考えてみれば’リサイクル・スタジオ’、いや’博物館’であった。やがてデジタル化の波に押されて閉鎖を余儀なくされるわけだが、ここでの20年近くで培ったメンテナンス技術と耳だけは、有難いことに今も手元に残っている(当然いくらかの借金も残ったわけだが)。

■と言う訳で、このSTUDER A-80もOLD LINEのルーツのひとつになっている。第三回はスタジオに設置していたオリジナルAPIのコンソールについて。

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音響工房アナログ式  http://analogmode.jimdo.com

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