« 2008年12月 | トップページ | 2009年2月 »

2009年1月28日 (水)

レインボー喜寿 靉嘔(AY-O)

Ayo ■「音響エンジニア」や「ミキサー」になるには?という質問をよく見かける。今の時代、音楽の世界で’正攻法’とされるのは、専門学校を卒業してレコード会社やスタジオに入る方法だろう。回路設計やメーカーのハードエンジニアを目指すなら、大学等の電子工学科だろうか。つまり一口に’エンジニア’と言っても、その中は様々に分かれていて、今は分野によってはミュージシャン=エンジニアという場合すらある。もちろん、しかるべき’資格’もあるが、その知識が現場でどこまで役に立つかは未知数だ。エンジニアは実力しだいと言うけれど、学歴・派閥・財力、いろいろあるのはどこの世界も一緒だろう。

■私(アラフィーというらしい)の世代は、今のような丁寧な'道しるべ’が無かったので、おそらく一部のエリート組を除いては、’人脈’で業界にもぐりこみ、’たたき上げ’られていった方がほとんどではないだろうか。そいういう私も、専門学校で専攻したのは美術、卒業後に入社したのは某デザイン研究所、担当はシルクスクリーンであった。が、音楽&電気好きが高じて気付けばご覧の通りである。まあ、祖父が江戸の筆職人だった遺伝子のせいか、ものづくりの現場にはずっと携わってきたことは変わらないし、現在のようにデザイン現場にMACが導入されていたら、そのままエレクトロニカ方面にでも傾倒していったのだろうか。いや、アキバ系オタクか・・・。

■シルクスクリーンといえば、現在、三鷹市美術ギャラリーで開催中の靉嘔(あいおう)。実は在学中にご教授頂いた先生のひとりである。すでにフルクサスや作品’レインボー’で美術界には注目されていたが、当時40代前半だったご本人は特に尖ったところのない、作風とは違って、どちらかと言えば地味な印象の方だったと記憶している。その先生も77歳かと感慨に耽る。自分が年を取るのも無理はない。情けないことに今となっては’何を’教えて頂いたのか、どんな言葉を聴いたのかが全く記憶にないのだから。ただ色褪せずに残るのは、靉嘔というアーティストの作品が放つ存在感。それだけである。自分の喜寿まであと20年ちょっと。短いような、長いような。いや、きっとあっという間に違いない。それを思うと、人生は短い。

                                                        

| | コメント (0)

2009年1月26日 (月)

OLD LINEのルーツ② STUDER A-80

■「OLD LINE」のルーツ2回目は、前回のAMPEXと対極にあると言ってもいいSTUDERのアナログテープレコーダーだ。道場主がAMPEXと共に長年スタジオで使ってきたのはA-80の2トラック、4トラック、16及び24トラック、B-67、A-80の後継機種のA-800、A-810、A-820である。

■資料映像の(例によって他人様のだが)、まず外観に注目して欲しい。STUDERはAMPEXと比べて、なんと言ってもスマートなフォルム、細部までカチッと精巧な作り、言わば’洗練された’印象がある。アメリカ文化とヨーロッパ文化の違いとも言える。そのサウンドはAMPEXのような土臭い馬力感とは違い、どちらかと言えば優等生的なまとまりのあるサウンドだと思う。

■走行系については、ピンチローラーとキャプスタンシャフト(※テープを移動させる要の部分)の部分で起こる’テープのせり上がり’に問題があったが(これは後継機種でも発生した)、全体的に安定度は高く、AMPEXよりは’安心感’があった。しかも無愛想なAG-440に比べ、こちらは至れり尽くせりである。シャトル(※テープ編集の時に便利な機能)が付き、ヘッドブロック部に仕込まれたテープ編集用のハサミは効率が良く、これは本当にスグレモノであった。

■STUDERとAMPEXは、前述のようにサウンドキャラクターが異なるので、録音するプログラムによって使い分けた。両者のどちらが上だというのではなく、両者とも素晴らしいテープレコーダーだ。操作性も音も違うマシーンの性格を知りどう使いこなすかが、もちろんアナログ/デジタルに限らず機器を使う上で大切だ。

■個人的好みで言わせて頂ければ、AMPEXの音にSTUDERの操作性があれば完璧だったのだが。完璧なものが存在しないからこそ、アナログの世界は奥が深い。作り手の顔が見えてくるような機械の個性。そしてメンテナンスを自分で行えて、好みの加減に調整が出来ることも大きな魅力である(もちろん知識と技術を身につけた上で、の話だが)。

■ちなみに、これらの機材はすべて中古で(格安で)スタジオ放出品を入手し、メンテナンスをして使った。熱意はあるが資金のない、大手スタジオを飛び出した若手エンジニアが創った、考えてみれば’リサイクル・スタジオ’、いや’博物館’であった。やがてデジタル化の波に押されて閉鎖を余儀なくされるわけだが、ここでの20年近くで培ったメンテナンス技術と耳だけは、有難いことに今も手元に残っている(当然いくらかの借金も残ったわけだが)。

■と言う訳で、このSTUDER A-80もOLD LINEのルーツのひとつになっている。第三回はスタジオに設置していたオリジナルAPIのコンソールについて。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(C)2009 アナログ&ハンドメイド音響機器 OLD LINE

| | コメント (3)

2009年1月25日 (日)

OLD LINEのルーツ①  AMPEX AG-440

■OLD LINE機器のサウンドが、どのような歴史をたどって出来上がったのか。ここでは、道場主が実際にスタジオで使ってきた機器をたどりながら説明していこうと思う。

■1回目はアナログテープレコーダーのAMPEX AG-440。資料映像は8トラックだが、雰囲気だけでも十分に味わえるのでご覧ください(他人様のだが)AGは次回で書くSTUDERのA-80と同じくアンプ部以外の基本的な部分は同じである。勿論テープ幅が異なってくるので走行系は違うが、単純に言ってアンプを積み上げた形になっている訳だ。AGには資料のようにマルチトラックの製品もあったが、私が使ってきたのは2トラックで、主にマスターレコーダーとして使用した。MTRはAMPEXのMM-1200-16と24を愛用していた(これもアンプはAGとほぼ同じ)他にAMPEX ATR-102/2トラックも使っていたがフェライトヘッドのザラついた音が特徴だった。

■その姿はまさにアメリカン・ヘビーデューティ。ヨーロッパの機器、例えばスチューダーのような精緻な作りや仕上げではないが、見た目はとにかく頑丈である。その無骨な外観の通り、音には独特の存在感。鮮度が高く、力強い芯があり、生き生きと、演奏の躍動感を損なわない。もちろん繊細な音は繊細に。弱々しいのとは違う。とにかく音楽のジャンルを選ばず、音にビシっと筋を通す名機なのである。

■しかし、その至極の音を手に入れるための道のりは平坦ではない。このAGの使い勝手は極めて悪いのだ。テープカウンターはないし、走行系はジャジャ馬と評された程で、サーボなしのモデルはテープテンションが安定しない、注意しながら操作しないと、テープがバックラッシュして大事なテイクを駄目にしてしまう可能性もある。サイズは中型の冷蔵庫くらい、、、。まるで設計士が’音’のために全てを犠牲にしたとしか思えない。いやこれは、ミキサーへの挑戦状なのか。■だからこそ相対する方も緊張感が生まれて、五感が研ぎ澄まされる。もちろん現在のデジタル機器に対する緊張感とは違う。それはデジタルデータ(無機物)を扱うか、アナログテープ(生きもの)を扱うかの違いであるように思う。

■使い慣れている人は、例えば早送りしてテープの目的の位置を出す時は、テープリールに軽く手を添えてブレーキをかけながら行う。それぞれのエンジニアが、自分だけの技を持っている。ではなぜそこまでして、じゃじゃ馬に乗りたいのか。もちろん、その存在感のあるAG独特のサウンドは、他の機器では得ることが出来なかったからだ。

■ディスクリートのアンプとテープヘッドとその形状、ジャジャ馬の如き走行系、周波数特性の暴れ具合、そしてAMPEXのスタッフの情熱が絶妙に組み合わさって出てきたサウンド。その音を現場で知っている自分は幸福で、今や’アナログ生き字引’であると実感する。だからこそ、自分の手と耳が覚えている’音楽的な’サウンドを、現在のデジタル現場に少しでも再現したい。もちろん他にもテープレコーダーは数種類使ってきたが、特にこのAMPEXがOLD LINEの指針になっている。

■次回はAMPEXの対極にあるといえるヨーロッパの名機STUDERについて書こうと思う。(つづく)。

| | コメント (0)

2009年1月20日 (火)

特注の部屋⑫ A級 4CHマイクプリ

Chmicpre

◆仕様変更オプションはカテゴリ「仕様変更について」をご覧ください。 ◆製品については当ブログをご覧ください。 ◆発注はご入金を確認後決定となり、製作スタートとなります。

 4ch_001_edited_2 ■2008年5周年記念限定品として発売したマイクプリ廉価版のMPXシリーズが母体となっていますが、中身のアンプは上位機種eustachioクラスが3/4CH、KAMUIクラスのアンプが1/2CHという配置で製作しています。更に1CHにはEG等の楽器用入力としてHi-Z入力を追加。MICとINSTの入力切り替えスイッチが付いています。OLD LINE製品の音の要であるゲインブロックは1/2CHが1960-F2、3/4CHに1960-B2を搭載。電源は特注のPSUである。 

 ◆現在、old line laboは音楽制作用機器ブランド、Deltaはオーディオ再生用機器ブランドとなっています。

(スタンダード仕様及びゲインブロックは1960-C) 価格 115,000円⇒89,600円

◆写真の製品はグレードアップ 仕様変更したモデルで、128,000円⇒102,400円

◆オンラインショップはクレジットカード決済のみとなっています。銀行振り込みでのご購入の場合は、メールを戴ければ返信にてお振込み口座をお知らせ致します◆

◆電子商店「アナログ式」  http://analogmode.thebase.in/ 

 各モデル共、出力VOL追加は1chにつき1,500円

◆スタンダード仕様について◆ プロ機器はI/O(入出力)共にバランス接続仕様が標準ですが、当ブランドではマイクプリやラインアンプ、ミックスバッファは(入力のみバランス)、コンプは(入出力共アンバランス)をスタンダード仕様としています。 これはディスクリート構成のため、I/O共バランス仕様を標準にすると価格が高くなってしまうからです。 スタンダード仕様の価格を下げることで、より多くの方に私の作る製品を使って頂ければと考えています。 また仕様変更により、I/O共バランスやグレードアップのための数々のオプションを用意しています。  

お問合せ analogmode21@gmail.com

 

お客様の声ご本人の了解を得て掲載しています。ありがとうございました)■~前略~ レコーディングはまだですが、試しに音を入れてみました。まずB2、eustacioのほうから通してみました。u87は今手元にありませんので、手持ちにあった改造コンデンサーマイクを通してみました。これ自体若干ハイ上がりですがローまでよくのびる音です。ドライな印象なマイクです。これを通してみましたが、さらにハイファイ感が増し、抜けが良くなりました。しかし、これがオールドラインのニュアンスなのか、独特の空気感があって、暖かくてがっつり芯が通った感じです。それでいて粒立ちがよく、ボーカルにはとても良い印象です。まさに最初に要望させてもらった通りの音でした!というよりそれも超えていました。最高です!通りかかった鳥の鳴き声も美しく聞こえました。昨年作っていただいたコンプのR1を通して、さらにアナログ感がましてぶっとくなりました!最強です。歌録りにはこちらの方が出番が多そうです。

kamuiのF2は、これまた独特の粒立ちがあり、まろやかな印象でした。B2より暖かく、丸い感じです。ドライなマイクをとおすと、程よく混ざりあって、丸くてつややかな音が録れました。楽器入力でF2にベースを通してみると、これは驚きました。いままでいじっていたEQはいったい何だったんだというくらい、反応が良くなったというか、低音が本当に太くなりました。本当につやがあって、シルキーな感じで聞こえ、いままで太いと感じていた太さの概念を覆されてような感じです。キックやタムを録ってみたい感じです。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

アナログ&ハンドメイド音響機器OLD LINELogo_2009_site

 

 

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年1月18日 (日)

懐かしい顔が・・

■最近ご無沙汰しているのだが、久しぶりにオークションを覗いてみたら自作の初期モデルに出会う。

■5年前のメーカー設立時には、(もちろんそれまでの30年の録音エンジニア経験で培った確固たる自論はあったものの)、ただ無我夢中で臨んだ。が、それは同時に’機材製作者’としての試行錯誤の始まりでもあったわけで、今となっては数年ぶりの’再会’は、まるで昔の自分の写真を見るようで気恥ずかしさだけが先にたつ。

■この5年間で、ざっと300台以上の製品を送り出したが、面白いことに1台1台ご注文頂いたお客様の名前やご要望が頭に残っている。廉価版のRENEGADEをはじめ、出荷した300台のうち三分の二は何かしらパーツや定数の変更をしているので、それぞれが’特注’であり、愛着のある1台である。初期の機材を’燃えないゴミ’にされず、大切に次の世代にバトンタッチして下さる方がいらっしゃるのは大変あり難い。送り出す方も、あらためて身の引き締まる想いである。

■内部写真まで載せて頂いたものもあり、それを見ると「ああ、こういう作りをしていたなあ」と感慨に耽る。勿論、現在の方がワイヤリングにしても遥かにカチッとしているので、この年でも人間はまだまだ成長する余地があるのだと思ったりもする。そして今も、頭の中の完成図に手の仕事を近づける毎日が続く。自信のサウンドに、プラスαを。それが今後のOLD LINEが目指すところだと思っている。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2008年12月 | トップページ | 2009年2月 »