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2007年8月24日 (金)

「録音道場」ワークショップvol.4 終了にからめて

■4月から続いたアルバム2枚のミックスも終了、機材製作も一段落。やっとブログ更新かと思えば、今年の夏ももうすぐ終わりである。

■8月4日に開催した4回目の録音道場(ワークショップ)は「ギター録音の基本」。AG(アコースティック・ギター),EG(エレクトリック・ギター)録音の基本マニュアルを伝授した。マニュアルの内容はここに記すスペースがないので、どうぞ道場にご参加いただきたい。

■最初に言っておけば、本来ギターに限らず、生身の人間の演奏録音は基本のマニュアルだけでは太刀打ち出来ない。これは、同じ演奏者が同じ楽器で演奏しても、日が変われば音や演奏コンディションに違いが出でくる場合もあるからだ。だからこそエンジニア側に、ゆるがない録音セオリーとその応用力が必要になってくる。

■例えばスタジオを数日借り切って、録音の間は楽器をスタジオに置いておくことも可能だ(リズムセクションのタイコ等ではよくある)。が、それでもサウンドチェックで前日と同じようにいかないこともある(演奏者のタッチ、楽器の状態など様々な理由による)。前回と違う状態のコンディションを整え、’何とかする作業’が加わる。これは録音機材がデジタルでもアナログでも同じことだ。しかし、それでよいのである。だから面白いのだ。生演奏の録音は「手間を楽しむ」ことなのだと思っている。ミュージシャンとエンジニア間のレスポンスを楽しむ。それこそが打ち込み作業では味わえない醍醐味である。

■基本のマニュアルを頭で理解しただけでは、当然、演奏現場では立ち往生することがあるだろう。では基本の他に何が大切かというと、先ずは演奏者とのコミュニケーションがある。挨拶をする、軽い世間話をする、といった小さなことから始まり、まず演奏者にメンタル&サウンド的に気持ち良く演奏してもらうこと。必用ならば演奏の仕方や、音色、チューニングやミュートやダンピングの変更、弦の種類や演奏する場所等も演奏者と相談する。つまり楽器の基本知識はある方がよいということだ。■それとミキサー(エンジニア)のセンス。演奏を聞いて、自分の感性で音楽的なイメージを描くことが出来るかどうか。それに加え、経験から蓄積された応用テクニックや、知識。録音された音楽が皆がイメージする所へ辿り着くかどうかはエンジニアしだいである。好きなCDを聴き、なぜ好きなのかを考える。生の演奏を沢山聴く。自分で演奏してみる。普段から意識をもって音楽に接する姿勢が大切だ。

■ワークショップやメールで「どうしても自分の思ったように音が録れない」といった相談を頂くことが多い。まず基本マニュアルを知り、それを自分で応用していくこと。リハーサルを聴いて深くイメージする。マイクアレンジやEQ、コンプ等の周辺機器を、マニュアルとは全然違う使い方をしても構わないのだ。音を単体でとらえるのでなく、音楽全体を掴むこと。生演奏の録音で一番大切なことは、マニュアルに忠実であることよりも演奏者から紡ぎだされる「音楽」を感じる心である。

■私にも、若い頃にはコミュニケーション不足で悔いの残る録音になってしまった経験がある。だからこそ次の機会にはコミュニケーションを上手く図り、良い仕事をしようと思うものだ。良い作品を創るためには手間を惜しまないこと。演奏者とエンジニアの真剣勝負が繰り広げられる生演奏の録音にこそ、この仕事の真髄があると考える。

だから、飽きずに30年もやってこられるのだ。

音響工房アナログ式  http://analogmode.jimdo.com

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