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2006年10月26日 (木)

OPTLIM/2CH/2Uラックマウントケース仕様

■というわけで「次回はシステムの最後にくる録音機と、卓のメータの関係について書いてみたいと思う」と書いたわけだが、ちょうどご注文頂いていた上位機種が完成し、なかなか良い音を鳴らしてくれたので、ここで少しばかり宣伝を兼ねて機種説明をさせて頂きたいと思う。残念ながら、もうお客様の元へ送り出してしまったので、写真を見ながらしみじみ解説したい。娘を嫁に出した父親の心境とはこういうものか。これでは、ほとんど親ばかだ。(実はOPTLIM/2CH仕様はもう1台製作中であるのだが)。

Opt_lim_front_2006_10_26_001_1 写真は黒パネ2Uラックマウントケース仕様でGAINとGRの2ノブコントロール。アンプゲインの切り替えスイッチ、オプチカルコンプの心臓部であるフォトカプラをLEDタイプと電球タイプのどちらかに切り替えるSWが並んでいる。

■フォトカプラを採用したコンプはクセがあると良く言われるのだが、それは違う。良い設計のものは、自然(人間的)かつ音楽的な調整が可能だからだ。LEDタイプは既に生産されていないHTVのものを、電球タイプは今は無くなってしまったMORIRICAのヴィンテージカプラを使っている。HTVのフォトカプラも手に入りにくくなったが、それ以上にMORIRICAの電球タイプは、奇跡的に出会った某店でも今後まず出ないだろうと言われた希少品だ。

■LEDタイプと電球タイプを切り替える方式では、各カプラの動作特性(光スペクトルや、ある照度に達するまでの立ち上がり時間、また立下り時間、抵抗値の変化など)が違う。あちらを立てればこちらが立たず的な矛と盾を丸く収めなければならず、試行錯誤に相当の時間を費やしてしまった。正に産みの苦しみである。

■もう一つの核となるパーツは、当メーカーのAクラス・ディスクリート増幅素子1960ゲインブロック(ハンドメイド)である。現在9タイプの製品があり、それぞれが明確に異なるサウンドキャラクターを持っている。これは真空管と同様にピン足が出ていて、基板上のソケットピンに差し込まれている。4タイプを揃えれば、差し替えて使うことが可能である(料金はかかりますが)。■まあ、簡単に言えばOPTLIMとはLEDモードでは帯域の広いコンプレッション、電球モードはややナローレンジだがタイトで芯のあるサウンドが得られる。そして2ノブでコントロールする楽しさを得られる機材なのだ。

■本日、商品を受け取られたお客様からも声が届いた。とても嬉しい感想だったので、ここに一部引用させて頂きます。「~前略~出て来るサウンドはまるで別物。2MIXに心地よいまとまり感・艶やかさが出て、なおかつダンゴにならず輪郭がよりクッキリとしました。さらに驚いたのは、リズムがモチモチと弾力的に弾み、肉体的なグルーヴに変化したことです。これは何とも言えず気持ち良いです。この状態で録ってみて、念のため波形も見てみたら、アタックの形状がかなり変化していました。まるで人が手書きで操作したかのように、原音に輪郭を与え、太く締まった波形が、描かれていました。プロのエンジニアの熟練の技を、自宅で体感できたことに鳥肌が立ちました。リダクションを深めても、コンプ臭くならず自然なかかりで驚きます。~後略~」。■ひとりでも多くの方が本当のアナログの素晴らしさを体感して頂けるように、また今日も良いものを作らねばと心を引き締める。(そして、お待ち頂いている皆様、大変申し訳ございません。順次、鋭意製作中です)。

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2006年10月 4日 (水)

五感を使う 実践その1

Renegadetwo_f■たとえばUrei(UA)のマイクプリM-610のように50年代、60年代のヴィンテージ機材にはメータが無いものも存在する。現代の機材が使い手に親切すぎるだけに、当時の、使い手を少し突き放したような「潔さ」に魅力を感じる。想像力を刺激されるからだろうか。■手前味噌だが、当メーカーで人気の廉価機種RENEGADE もメータがない。これは価格を抑えるために音質に影響の無い回路は極力省いた結果なのだが。。では、そのような「少し不親切な機材」をどう使いこなすのか。今日はそのコツを書いてみようと思う。

要になるのはシステムの最後にくる機材のメータ■詳細は長くなるので次回に書くが、このことを頭に入れてほいて欲しい。最後につながれた(録音機である場合がほとんど)機材のメータで判断する。これが基本である。

マイクプリ(マイクプリアンプ)の場合■その後に接続される機材=インターフェース(DAWの場合)やMIX画面のメータ、また卓がある場合はそれらのメータを見て調整する。録音の場合、録音機(テープレコーダー、HDR、DAW等)が同室にあれば、そのメータを見ながら録音レベルを調整する(スタジオなど、録音機がマシンルームにある場合は、また別の機会に)。一般的なマイクプリには入力や出力レベルを監視するメータやピークインジケータが付いている。

■コンプリミ(コンプレッサー・リミッター)■メータの無いコンプを使う場合も、基本的には上記のマイクプリの場合と同じである。一般的なコンプには入力レベル、出力レベル、そしてGR(ゲインリダクション)レベルが監視できるようにメータが付いている。

メータが付いている場合■もちろん、メータが付いていればメータを見る場合もある。が、「メータの振れに頼って音を録るのは’電気屋’。私たちミキサーは’音屋’である。メータに頼らず、耳で録れ」と先輩から教わった言葉が忘れられない。メータはあくまでも、文字通り「目安」と考える方がいい。それは「レベルがOK=音がOK」とは言えない場合が多いからだ。人間は数値で示されると「安心」することが多いが、その姿勢を疑ってみることは常に必要である。

■当メーカーのコンプを注文される際に「GRメータを付けることは出来ますか?」とお客様に尋ねられることがある。もちろん可能だが、ハンドメイドゆえコストが跳ね上がってしまう。上記のように後続機材のメータで充分判断がつくのだから、予算的にも付けないことをお勧めしている。それでも。。とおっしゃる方は、高額になってしまうことをご理解頂いた上で、ご希望に沿った機材をお作りするのだが・・・

■こうして、あらためて書くと本当に簡単なことだ。機材を単体で見ているとわからないことも、システム全体でとらえれば解決する問題は多い。そして何を使うにも音響機器の基本として大切なことは、目よりも耳を使うことである(またかと、耳にタコが出来た方もいらっしゃるだろうが・・)。視覚に頼りすぎてしまうと、人間はどうしても聴覚が鈍くなる。そのことを今一度、肝に銘じて頂きたい。

次回は、「システムの最後にくる録音機と、卓のメータの関係について」書いてみたいと思う。

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2006年10月 2日 (月)

アンチエイジング?

Renegate_12 ■最近、人間の世界では「アンチエイジング」などと勇ましい言葉が流行っている。が、これはなんとも’しんどい’発想ではないだろうか。age=年を重ねる、熟成させるということなのだから、もっと肯定的に受け取れば人生楽になりそうなものを・・。この夏50肩で苦しんだ経験から、それまでの「年なんか無視」から「年には逆らうな」という哲学に辿り着きつつある。考えてみればその点、音響機器の世界では昔から「エージング」が歓迎されているのだから、これはなんとも有難い(笑)。※音響機器の世界では’エージング’と表記するのが普通だ。■機材を使い込むことによって、個々のパーツを含めた内部回路のエージングが進み、本来その機器が持っているサウンドキャラクターが立ってくる。それぞれのパーツによって、ある程度音が馴染むまでの時間には差があり、当初の荒い部分が取れ、落ち着いて来るのが第一段階になる。その後は半年、1年~10年、20年と使っていくうちに、本当によい具合に「エージング」されていく。使い手が機材を「育てていく」という感覚だろうか。■現在作っているゲインブロックも、当然エージングされていくうちに、そのサウンドは熟成される。ただ、10年、20年と使っていくにはちょっとしたコツがいる。それは負荷を掛け過ぎないように使うことだ。「上手に年を重ねるコツ」は「無理をしない」ということは人間同様だろう(書いている自分の耳が痛い)。■前回の記事と重複するが、これはメータ上などの視覚で判るものではないので、使う人の五感+アルファ(想像力、直感)が大事になってくる。有名なAPI2520ディスクリートオペアンプでも、うまく使えば何十年も働いてくれるが、やはり無理な使い方や、負荷のかかりやすい場所の2520は割合早いうちに昇天してしまう。(※このような場合は’故障’とは考えず、寿命を早めてしまったと考えるのが普通である)。機材も生き物なのだ!生きているからこそ、ただ使うだけでなく、人間や動植物、あらゆる生き物に接するのと同様に、その日の調子などを感じ取って使っていって欲しい。とここまで書いて、やはり耳の痛い自分であった。

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2006年10月 1日 (日)

お取り扱い注意!

Keikoku ■今までに150台近い機材を手元から送り出している中で、「初期不良」としてクレームがついたものが一台ある。もちろん発送の時点では、エージングやテストを終え「問題なし」と判断した機材ばかりだから、本当は一台でもあってはならないのだと思っている。こちらも納得できぬまま「不良品」だと送り返された機材は、スーパーのビニール袋に囲まれ、まだ出荷から数日しか経っていないのにアチコチと傷がつき、足もひとつ取れている状態だった。一瞬目を疑ったが、哀しいかな現実だった。しかもお客様が「故障している」と訴えられた原因は、オーバー出力によってゲインブロックを飛ばしてしまったことにあったようだ。返品の際に「メーターがない時は、どうやって出力を見るのか?」と質問され(※現在発売の廉価機種RENEGADEは、価格を極力抑えるためにメーターを付けていない)、こちらが「アナログの常識」とするところを、まったく経験したことが無い世代が登場しているのだと痛感した。これは極端な例だったとは言え、「アナログ機材の扱い方」をもっと真剣に、私たち世代が一から伝えなければならないのだと反省しきりの出来事だった。せっかくアナログに興味をもって頂いた若いお客様が、「アナログは難しい、壊れやすい」などと誤解を抱くことなく、またいつか挑戦して頂けたらと切に願っている。■「五感を鍛える」でも書いたように、アナログ機材の扱いには、ちょっとしたコツがいる。デジタル機材に慣れ親しんだ「視覚優先」世代は、ここで「聴覚優先」に切り替える必要があるのだ。アナログ機器は生き物だ。彼らとうまく付き合っていくには想像力が必要である。今日の調子はどうだろうか?ここまでレベルを入れても大丈夫だろうか?常に音を聞きながら、感じながら使うことが大切なのだ。機材を「育てていく」という感覚かもしれない。■どうぞ到着した機材のお取り扱いは,お送りした機材の特性を理解しながら充分にご注意ください。特別に難しいことは何もありません。デジタル機器とは違った発想が必要なだけです。それは「愛情」という言葉に置き換えてもいい。そして少しでもわからないことがあったら機材に無理をさせず、どうか作り手の私に問い合わせて頂きたいと思います。

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